2. チの伝説
 
 
 世界中でチューリップにかかわる伝説や昔ばなしが伝わっています。
 いくつかを紹介してみましょう。
 まず最初は、チューリップの国オランダに伝わるお話。
 
 

   むかしオランダのある町に住んでいた、かわいらしくて、心のやさしい

  少女に3人の騎士が恋をしました。騎士たちは少女に気に入られようと

  して、王冠や剣、宝石、金銀などをつぎつぎと贈りとどけました。

   はずかしがり屋の少女は、どうしたら良いものかわからなくて困り果て

  てしまい、花の女神のフローラにお願いをして、自分を一輪のきれいな花

  に変身させてもらいました。その花は、「王冠」の花びら、「剣」の葉、

  「黄金」の球根をもっていました。やがて、人びとはその花のことをチュ

  ーリップと呼ぶようになりました。

   可憐なチューリップは、こうして生まれたのです。

 

 ギリシアにも、よく似た話が伝わっています。
 

   むかしあるところに、チューリップという名前の少女が住んでいました。

  チューリップは誰からも愛される、心やさしい美しい少女でした。秋の神

  ヴェルツーヌ(ヴェルツータ)も、ひと目みてチューリップを愛してしま

  いました。ヴェルツーヌの思いはとてもはげしく、まるで狩人がえものを

  追うようにチューリップを追い慕(した)いました。

   ところが、ヴェルツーヌのあまりにもはげしい心にとまどったチューリ

  ップは、貞節の女神のディアナにたのんで、自分を一輪の花に変えてもら

  いました。若すぎる彼女には、ヴェルツーヌの愛を受け入れることは、ど

  うしてもできなかったのです。

   春の花チューリップは、こうして生まれたのでした。

 

 ギリシアのお隣、トルコに伝わる伝説は、もっとドラマチックです。

   ..... チューリップは、フェルハドのなげきの血から生まれた .....。

   ..... フェルハドはシリンを愛した。しかし、そのシリンを娶(めと)る

  ためには、エルマの山を穿(うが)ち、その山の向こうから町まで水を引

  かねばならなかった。山ひとつをくり抜かねばならぬ。作業は困難をきわ

  めた。

   やがて、山掘りに手間どるフェルハドのもとへ、突然、シリンの死を知

  らせる悲報がとどけられた。おどろきと悲しみのあまり、フェルハドは山

  を穿つ斧(おの)を自分の体にふりおろし、彼の体から鮮血がほとばしっ

  た。 ..... そして、フェルハドのその悲しみの血の仲から、チューリップ

  の花が生まれた .....。

 


  この物語が伝わるアマシアの町の周辺には、今でも「フェルハド・アラシ」
と呼ばれる水路が残り、 チューリップの栽培をさかんにおこなっています。
今日に伝わる品種の内、少なくとも7種はこの町 を原産にしたものとも言わ
れています。
  昔ばなしや伝説以外にも、チューリップは色いろな文学作品や詩歌の中で
とりあげられています。
 あなたの町では、チューリップをどのように伝えて行くのでしょうか。
 
 

 
             トルコのチューリップの本の挿絵(1725年頃)
              Anna Pavord, The Tulip : The Story of A Flower
              That Has Made Men Mad  (Bloomsbury, 1999) .
 


 
 


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